【マンガ史解説】『鳥獣戯画』は最古の漫画ではない?その理由を解説

巻物を広げるカエル マンガ/漫画

ドーモデス。タツヒコです。

皆さんは日本史や美術の授業で『鳥獣戯画』の資料を一度は見たことがあると思われます。

そんな『鳥獣戯画』ですが、一時は「日本最古の漫画」と呼ばれていたのをご存知でしょうか?

こうなったのには色々と経緯があるのですが、現在ではその説は否定されている傾向にあります。

それはどうしてなのか?この記事で解説していきたいと思います。

  • 『鳥獣戯画』ってどういう作品なの?
  • 何故「最古の漫画」とみなされていたのか?
  • 何故否定されたのか?その理由はなに?

こういった疑問について解説していきます。

まず『鳥獣戯画』とは?

まず『鳥獣戯画』の全体像について簡潔に把握しましょう。

四巻構成の絵巻物

『鳥獣戯画』は正式名称を『鳥獣人物戯画』と呼び、一枚の大きな巻物に絵が描かれた“絵巻物”に分類される作品です。

現在では栂尾山(とがのおさん)・高山寺所有の国宝に指定されています。

その中身は甲・乙・丙・丁と名付けられた4つの巻で構成され、巻ごとに描かれている絵は異なります。

以下、一例を紹介します。

甲巻

鳥獣人物戯画(甲巻のカエルとウサギ)
引用元:wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E7%8D%A3%E4%BA%BA%E7%89%A9%E6%88%AF%E7%94%BB)/2009.01.15/鳥獣人物戯画/Kyoto National Museum – kyohaku.go.jp/パブリック・ドメイン

一番有名であろう、例のカエルとウサギが登場する巻です。

動物をデフォルメ化して描いた絵が巻の大半を占めており、カエルとウサギ以外にも猿やキツネも描かれています。

乙巻

乙巻より、咆哮する獅子と背中を掻く獅子
引用元:wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E7%8D%A3%E4%BA%BA%E7%89%A9%E6%88%AF%E7%94%BB)/1200年代/乙巻より、咆哮する獅子と背中を掻く獅子。/パブリック・ドメイン

おちゃらけた甲巻から打って変わって、乙巻では迫力のある虎や獅子、更に空想上の動物である麒麟らしき絵が登場します。

丙巻

丙巻より、首に綱を巻いて綱引きをして遊ぶ男性たち
引用元:wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E7%8D%A3%E4%BA%BA%E7%89%A9%E6%88%AF%E7%94%BB)/1200年代/丙巻より、首に綱を巻いて綱引きをして遊ぶ男性たち。/パブリック・ドメイン

丙巻からは動物以外に人間も登場します。画像のよう何か遊んでいる様子を描いている絵が多いです。

丁巻

丁巻より、法要中の公家たち
引用元:wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E7%8D%A3%E4%BA%BA%E7%89%A9%E6%88%AF%E7%94%BB)/1200年代/丁巻より、法要中の公家たち。/パブリック・ドメイン

最後の丁巻は今までの巻をオマージュしたであろう絵が確認されています。模写を行ったのか、画像のように非常にリアルな男性の顔が描かれている場面もあります。

作者は誰?いつ描かれた?

そんな『鳥獣戯画』ですが、作者・成立年代がきっちり判明していない作品でもあります。

成立年代については、甲・乙巻は白河法皇・後白河法皇が治めていた平安時代後半に成立したのではないかと言われています。

丙・丁巻は甲・乙巻よりも後発ということから鎌倉時代の成立と推測されています。

作者については、天台宗の僧であり絵仏師の“鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)”という方が描いたと言われています。

ただこれについては確証は無く、絵柄が巻ごとに異なるという理由から複数の絵師が関わっているのではないかとも言われています。

いずれにせよ、作者・成立年代は未だ謎だらけで現在も研究が進められているらしいですね。

「最古の漫画」と呼ばれた理由

漫画が敷き詰められた本棚

さて本題に移りましょう。何故『鳥獣戯画』は「最古の漫画」と呼ばれてきたのでしょうか?

それには以下の理由が考えられます。

デフォルメされた動物

甲巻を見れば分かると思いますが、『鳥獣戯画』の動物たちは総じてデフォルメ(省略・変形)されて描かれています。

現代の漫画もキャラクターというのはリアルに忠実に描くのではなく、所々省略しています。

また本来なら四足歩行するところを人間と同じ二足歩行にして描いている部分も一種のデフォルメと言えるでしょう。

人を模したコメディタッチな絵

『鳥獣戯画』の動物と言えば人間っぽいアクションを描いた特徴があります。

泳ぐ、弓を弾く、物を運ぶ、追いかけっこをする、仏像の真似をする、お経を読むなど甲巻だけでも多種多様な所作を見ることが出来ます。

こういった本来人間だけが出来るはずの動きを動物に行わせるというのは、現代の創作でもよく描かれる作風ですよね。

あの“手塚治虫”が認めた作品

皆さんもご存じであろう日本の漫画の神様・手塚治虫がなんと「漫画の原点」として『鳥獣戯画』を紹介しています。

1982年にNHKの「日曜美術館」という企画で手塚治虫本人が出演し、『鳥獣戯画』の紹介と現代漫画との繋がりについて熱弁するシーンがありました。

またその当時の様子をポップカルチャー総合誌の『BRUTUS』が取り上げ、記事として掲載したこともありました。

気になる方は「手塚治虫 日曜美術館」と検索してみて下さい。

「最古の漫画」説が否定される理由

バツの立て札を見せる男性

最初に申し上げたように、現在『鳥獣戯画』は「最古の漫画」説が否定される傾向にあります。

理由を一つ一つ解説していきます。

『鳥獣戯画』はあくまで“絵巻物”という枠組み

「最古の漫画」とはいいつつも、『鳥獣戯画』の本来の枠組みは既述したように“絵巻物”です。

『鳥獣戯画』のような絵巻物は筆者が肉筆で描いた唯一の原本なのに対し、今私たちが読んでいる漫画は原画をコピーして本として作られた複製品です。

さらに漫画はパラパラめくる本である一方、絵巻物は一枚の大きな紙に絵を連続して描いた一枚絵です。

形式面で『鳥獣戯画』は漫画とは大きく異なると言える訳です。

コマが無ければ吹き出しやオノマトペもない

『鳥獣戯画』の画像を見れば一目瞭然ですが、この作品には漫画では見慣れたオノマトペや吹き出し、コマ割りが存在しません。

セリフすら書かれておらず、一枚絵のみの構成になっているのです。

これなら江戸時代に誕生した『黄表紙』の方が、まだ現代の漫画に近いと言えます。

もっと古く似たような作品がある

“何かしら大きな媒体”“ストーリーチックな絵を描いた”作品は『鳥獣戯画』以外にも存在します。

例えばエジプト神話を表した壁画やギリシャ神話の絵画。もっと遡れば旧石器時代の洞窟壁画や古墳の壁画なども該当します。

「最古」という冠名をつける以前に、さらに時代が古い同系統の作品がいくつもあるのです。

終わりに

いかがでしょうか。漫画の歴史を探る上で『鳥獣戯画』の存在は無視できない作品です。

「最古の漫画」とは呼べないにしても、日本最大の巨匠が認めたというのは紛れもない事実。

日本特有のコメディ表現の先駆者としてのポジションにいることは確かでしょう。

今回はここまで。オタッシャデー!!

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