ドーモデス皆さん、タツヒコです。
単刀直入に伺います。皆さんは『北斎漫画』という本をご存知でしょうか?
かの有名な浮世絵師・葛飾北斎が描いた“漫画”の名前を冠した作品のようですが、現代の漫画とはどのような関連性があるのでしょうか?
というわけで今回は...
- 『北斎漫画』の概要と内容の説明
- 何故『北斎漫画』という名前なのか?
- 葛飾北斎は漫画家と言えるのか?
- 『北斎漫画』が海外に与えた影響
これらの内容について書いていきたいと思います。
前回のマンガ史解説記事(『鳥獣戯画』編)も是非ご覧ください。
目次
『北斎漫画』とは何か?

『北斎漫画』は既に申し上げた通り、絵師の葛飾北斎が描いた作品です。
初編が世に出たのは1814年(文化11年)。全十五編。
当時ベストセラー級の人気だったらしく、 北斎の死後も明治期まで刊行は続いたようです。
内容はどんなものなの?
漫画という名前を付けられていますが、その内容は我々が知る漫画とは一線を画します。
少しばかし画像をお見せしますのでどうぞご覧下さい。






どうでしょうか?
「いやこれ漫画じゃなくて画集じゃね?」「人以外にも風景とか動物とか色々ある…」「絵の近くに説明文みたいなのも書いてある」
などと思った方。正にその通りです。
実は『北斎漫画』は漫画ではありません。
この作品のジャンルは「絵手本(えてほん)」と呼ばれる、今で言うところの“デッサン本”や“イラストの描き方”的な内容を記したものになります。
何故『北斎漫画』と命名したのか?
何故北斎は漫画ではないこの絵手本に『北斎漫画』という名前を付けたのでしょうか?
それには「漫画」という字そのものに注目する必要があります。
元々漫画に充てられている“漫”という字には“マン”という音読み以外に、「そぞろに、みだりに」という意味が込められています。
そぞろに...?みだりに...?なかなか聞かない言い回しだと思います。
もう少し掘り下げて説明すると、「心の赴くままに」「理由もなく」「あてが無い」といった意味になります。
実際北斎はこの作品の絵を、「特に深い考えや目的もなく気の向くまま描いた」という旨を初編の冒頭部分で記しています。
なので北斎が『北斎漫画』と命名したのは、「葛飾北斎が気の向くまま(漫ろに)に描いた絵(画)」という意味をそのまま当てはめた、ということになります。
現代漫画と『北斎漫画』の関わり

さて、『北斎漫画』が漫画ではなく絵手本という別ジャンルなこと。
“漫画”と名付けられたのは北斎が思うがまま描いた作品だから、ということは分かっていただけたと思います。
ここで気になるのは“現在の漫画”との関わりがあるのか?ということだと思います。
北斎と『北斎漫画』が海外に与えた影響
北斎の浮世絵が海外で多大な評価を受けていることはご存知でしょうか?
北斎が活躍していた19世紀当時、浮世絵は海外に陶芸品を輸出する際の包装紙代わりに使われていました。
1867年開催のパリ万国博覧会で作品として始めて外国人の目に触れることになり、結果「ジャポニズム(Japonism)」という芸術観念が誕生しました。
北斎が描いた浮世絵も海外で高く評価され、
1998年にアメリカが発表した雑誌『LIFE』にて“この1000年で最も偉大な業績を残した世界の人物100人”の中で日本人で唯一選ばれています。
そして『北斎漫画』もまた、浮世絵画と同じくして海外に渡り、海外の作家たちに評価されたと言われています。
この作品の影響を受けた作家たちが、後の現代漫画の“オリジンofオリジン”と呼べる「風刺画マンガ」を描くことになるわけです。
葛飾北斎は漫画の祖?
そうなってくると、風刺画マンガの原点になった葛飾北斎は“漫画の祖”となるのでしょうか?
実際、風刺画マンガとの関連性を根拠に北斎を漫画の始まりとする言説も一部見受けられます。
しかし北斎が描いた『北斎漫画』自体は漫画ではなく「絵手本」、彼のイメージはやはり浮世絵画家の方が勝っていると思います。
果たして影響のあるなしはこの手の話題に含めてしまってよいのだろうか…
うーん……といったカンジで正直複雑な話だと思います。
私は北斎を漫画の祖と見るのは正直無理があると思っているもので…
ちなみに北斎の人気がすさまじい海外だと、“Hokusai First manga master”と呼ばれているそうです。
少なくとも海外では“葛飾北斎=漫画の祖”とみなしているようですね。
まとめ
いかがでしょうか。
江戸時代に既に“漫画”の名の付く書籍が誕生していたのは最初私も驚かされました。
北斎が漫画の祖かどうかは正直何とも言い難いですが、海外の風刺画文化を興したというのは偉大な業績と言って差し支えないでしょう。
今回はここまで。オタッシャデー!!
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...と言いたいところですが、今回はラストにおまけの枠を設けたので、そちらも一度見ていただきたいと思います。お時間宜しければどうぞ。
おまけ
今回の『北斎漫画』。実は国立国会図書館が運営している「国立国会図書館デジタルコレクション」で全編無料で閲覧が可能です。
(資料もこちらのインターネット公開のものから引用させていただきました)
リンク先の検索エンジンで“北斎漫画”で検索し、“インターネット公開資料”の絞り込みタグをクリックして3,4ページ目に飛ぶと、十五編全てが掲載されています。
『北斎漫画』を一度見てみたいという方は参照されてはいかがでしょうか。
というわけでおまけの『北斎漫画』無料閲覧の紹介でした。
では今度こそ、オタッシャデー!!!